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すべてにだしが染みわたる。「和食のおいしさNo.1」を目指す宝酒造とLEOC

宝酒造株式会社とLEOCが2021年4月に共同開発し、全国の給食事業所で使用されている「液体和だし」。LEOCの強みである科学的根拠に基づいた調理法に最適化され、化学調味料不使用で、長く続く自然な風味が大きな特徴です。その背景には「和食のおいしさNo.1」を目指すという、双方の大きなロードマップがありました。今回は開発に携わった両社の面々に、その秘話を伺います。

《対談参加者(左から)》
宝酒造株式会社 調味料広域販売部長 月野 由春さま
宝酒造株式会社 調味料広域販売部 第三支店 課長 辻村 多加志さま
株式会社LEOC 総調理長 柳原 健良
株式会社LEOC プロダクトデザイン本部 商品企画部 執行役員 大塚 珠季

業界の常識を変える

辻村 多加志さま

――「液体和だし」開発前の、両社の接点を教えてください。

辻村さま「とある病院の栄養科で、当社の炊飯改良剤に関心を持っていただいたことがあり、そこのお食事を受託していたLEOCさんとお話をしたのが2019年8月です。当社は調味料全般でお役に立てることもあり、ぜひ一緒に『和食のおいしさNo.1』を目指しませんかというお話をさせていただきました。その後具体的にご提案の機会をいただいた際、特に関心を持っていただいたのが『だし』だったんです」

柳原「大量調理の中でだしを取るのは時間がかかりますし、クオリティもばらつきやすい。かといってパックだしとなると、多くの商品が化学調味料を使っており、価格もそれほど安いわけではありません。おいしさやオペレーション、健康面での課題をクリアするために、だしの改善が必須でした」

――LEOCとして、宝酒造さまの強みはどこにあると感じていましたか。

大塚「分析力が高く、品質に対するエビデンスも明確なところです。家庭用の清酒や調味料でもおなじみだと思いますが、クオリティが高くて対応の幅も広いです」

柳原「一方で、給食業界としてこれまで関わってこなかったメーカーではありました。従来の給食用調味料となると、どうしても価格重視になりがちな部分はありましたし、なかなか接点を持つ機会がなかったんです」

月野さま「実は私たちとしても、給食業界とつながるような流通網を持っていなかったんです。今回のような加工業務用で使用する調味料となると、そこをサポートできる部門がなかったのも正直なところでした。お客さまの専門的な要望をいただき、課題解決をお手伝いできるようになったのは最近のことです」

――お互い初めての、かなりチャレンジングな取り組みだったんですね。

柳原「私は和食出身なので、宝酒造の本みりんは最高品質だと認識していましたし、そうした会社と取引できることは業界の常識を変えていくきっかけになると思いました」

辻村さま「LEOCさんと出会って、価格だけではない部分を大切にされている給食会社さんがいることを初めて知りました。必要な品質の部分にはしっかりコストをかけたいというお話をいただき、私たちとしても給食業界に貢献できることがあることを勉強させていただいた形です」

400種類のチェック

大塚 珠季

――最初の提案から給食事業所への展開開始までおよそ1年半。開発はどのように進んでいったのでしょうか。

辻村さま「最初の提案の際にいただいたテーマが『化学調味料を使わないこと』『品質と価格のバランスが取れていること』でした。そのテーマをクリアするために、ひたすら試作して、確認して、ご提案して・・・の繰り返しでした。LEOCさん側には40種類くらいの提案をさせていただきましたが、そこに至るまでに400種類くらい試作したと思います」

大塚「私たちもこちらに十数回お邪魔して、飲み比べしました」

――ものすごい試作の数ですね・・・。そこまで苦労されたポイントはいったい何だったのでしょうか。

辻村さま「正直、化学調味料を使えば旨味はすぐに出せるんです。それを使わずにどうやって旨味を出すか。ある原料を立てようとすればもう一方が引き立たない、ということも多かったです。また、だしだけではなく和麺やみそ汁でも使用されるとのことだったのですが、だしでは良くても和麺では良さが活きないということもありました」

柳原「ある時試飲したら、カップうどんのスープみたいな香りだったこともあって(笑)」

辻村さま「そこから脱却するのにも半年くらい。クリアするための素材の積み上げに、とにかく時間がかかりました」

――そこをクリアできた要因は何だったのでしょうか。

辻村さま「旨味の原料として煮干しを使いました。また当社のアルコール抽出の技術を活用し、だしの香りが飛びにくいものに仕上げました。パックだしなどと比べ、食事を召し上がるお客さまに届くまで、しっかりと香りや風味が感じられるものになったと思います」

柳原「品質と価格のバランスがぴったり合って、『これなら行ける』となったのが2020年の年末ですね」

「また食べたい」と思える食事

月野 由春さま

――全国の給食事業所へのレクチャーなどを経て、展開が始まったのが2021年4月。お客さまも含め、反応はいかがでしたか。

柳原「まずは『使いやすい』という反応でした。当然だしを取る手間が省けますし、だしを取った後に冷やす料理であれば、水から合わせて使えるので工程を簡素化できます。ちょっとした和え物にも使いやすい。そして何より、LEOC調理との相性がいい。特に煮物は独自の無水調理と組み合わせることで、だしがしっかりと効いた、当社ならではの武器になっています」

――LEOC調理とは、時間・温度・水分量のコントロールを中心とした、科学的根拠に基づいたオリジナルの調理法ですね。

柳原「先日、当社が給食業務を受託している、とある病院の患者さまからお手紙をいただきました。
『いろいろな病院の患者食を食べてきましたが、ここはすべての食事にだしが染みわたっていて、特においしさが増しています。患者が飽きないような工夫を感じ、味気ない入院生活の中でも食事の時間が楽しみです』
とのことでした。まさにLEOC調理と『液体和だし』のことを認めていただけた証だと思っています」

月野さま「だしのおいしさを実感していただけていて、私たちとしてもとても嬉しいです」

柳原「私たちにとって一番大切なのは『また食べたい』と思っていただくこと。小鉢ひとつでもおいしさを感じられるようにすること。給食という日常の食事の中でそう感じていただく上で大切なのが『後味』です。化学調味料ベースだと独特の風味が残りがちですが、素材本来のだしなら、すっきりした旨味・風味・コクを感じられます。毎日飽きずに食べられる食事を考えるうえで、非常に重要なポイントです」

「和食のおいしさNo.1」へ

柳原 健良

――「液体和だし」のリリースから2年半が経過しましたが、今後アップデートの予定はあるのでしょうか。

辻村さま「『液体和だし』では旨味の原料に煮干しを使っていましたが、一部の病院や保育園など、青魚が使用できない給食事業所もあると伺っています。そのような事業所向けに、青魚を原料に使用していない姉妹品を開発しました。もともと化学調味料を使わずに旨味を出すのも大変でしたが、今回さらに煮干しを使わずに旨味を出すため、さらに試作を重ねました。さすがに400種類作ることにはなりませんでしたが(笑)」

大塚「従来のものより価格もリーズナブルになりました。ヘルスケア分野は栄養面でも価格面でも規制がある中で運営しているので、その中でも活用できるものをお願いしました。来年初頭から試験導入を進めていきます」

柳原「宝酒造さまと関わる中で、調味料の面からもおいしさを追求していきたいと考えるようになりました。私たちは日々たくさんの調味料を使っていますが、一つひとつをとってみるとまだ改善の余地があります。価格とのバランスを取りながら、幅広く改良を進めていきたいです」

――「液体和だし」をきっかけに、可能性がさらに広がっていますね。最後に、今後両社が連携して目指していきたい将来像を教えていただけますでしょうか。

柳原「一言でいえば『LEOCクオリティの底上げ』ですね。当社は全国にさまざまな経験を持った調理師がいますが、どこでも安定したおいしさをベースとして担保しつつ、それぞれの人財ならではの特長が出るようにしていきたい。そのために『液体和だし』を軸としたLEOC調理をさらに広め、今まで以上に全国のお客さまに『喜びと感動』をお届けしたいと思っています」

辻村さま「今後もLEOCさんと一緒に、『和食のおいしさNo.1』というテーマを追求していきたいです。化学調味料を使わず、どのように私たちの強みを生かしてお役に立っていけるのか。すでにご提案中のものもありますので、ぜひ今後の動きにも注目していただきたいです」

――ありがとうございました!

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