インタビューの第8回は、LEOCが運営する「薪焼 銀座おのでら」の料理長・寺田 惠一です。
薪焼(まきやき)とは、薪窯で食材の旨味を閉じ込めながら焼き上げる調理法で、注目を集める新ジャンルです。「薪焼 銀座おのでら」の料理長は、弱冠28歳でミシュラン一つ星を獲得したスターシェフ・寺田 惠一。寺田のこれまでと、薪焼という新たな挑戦をご紹介します。
※記載内容は2020年4月28日現在の情報です。最新情報は「薪焼 銀座おのでら」ホームページをご確認ください。
▲寺田 惠一(薪焼 銀座おのでら 料理長)
輝かしい経歴から、若くして注目されてきた寺田。そんな寺田が持つ、食の原体験とはどのようなものだったのでしょうか。
寺田 「実は僕の父も料理人なんですよ。毎週日曜日が定休日だったんですが、その日はいつも父と食材を買いに出かけて、一緒にキッチンに立っていました。だから『料理人って格好いいな』『料理人になりたいな』と思うのは、僕にとってすごく自然なことでしたね」
高校を卒業し、1年間の専門学校を経て入門したのは、クラシックなフランス料理店でした。
寺田 「僕は負けず嫌いだったので、そのころは『早くこの店の仕事を覚えて一人前になりたい』と考えていました。お店も30席くらいの小さなところで、やる気さえあればどんどん任せてくれる先輩方と一緒に働けたことが自分の成長につながったんだと思います。
自分に割り当てられた仕事を早く終わらせて、先輩たちに次の仕事を教えてもらいながら、店の仕事全体の流れを把握するよう心掛けていました。『目の前の仕事に没頭するのではなく、常に全体の流れを見る』という考え方は、今の仕事でも生きていますね」
がむしゃらに仕事にぶつかり、実力を磨いていった中で、寺田にとって大きな転機が訪れました。
寺田 「あるとき、予約が一組だけの日があったんですよ。そのときに思い切って、料理長に『今日のコース料理、全部僕にやらせてください』とお願いしたんです。
ものすごく大変でしたが、最後にお見送りに行った料理長が『寺田くん、お客様すごく喜んでいたよ』と肩をたたいてくれたんですね。そのとき、グッとくるものがあって。
『ああ、この気持ちを忘れちゃいけないな』と思いました。下積み時代の経験で今に生きていることはたくさんありますが、一番大切にしているのはその思い出です」
若き寺田の心に深く刻まれた、「目の前のひとりのお客様を大切にする」という信念。寺田はその想いを胸に、大きく飛躍することになります。
▲「薪焼 銀座おのでら」には、寺田のチャレンジの連続が息づいている
その後寺田はフランスへ留学。帰国後はミシュランガイドで三つ星を獲得し続けている有名店「カンテサンス」で腕を磨いた後、ついに料理長としてフランス料理店「ティルプス」をオープン。開店後、当時ミシュラン史上最速の2カ月でミシュラン一つ星を獲得する快挙を成し遂げました。
ところが寺田の中では、どこか割り切れない想いを感じていました。
寺田 「料理長としてお店を運営していくには当然料理だけでなく、店の雰囲気や演出、コミュニケーションなどさまざまな要素を考えないといけません。
でもそのころの自分には、まだそれが足りていませんでした。まったく新しい考え方、新しいやり方を学ぶ必要を強く感じていたんです」
若くして得た名声よりも、ひとりの料理人としての成長を取った寺田。その後なんと、まったく経験のない日本料理店へ転職したのです。
寺田 「もちろんミシュランを取ってメディアにも出ていたにもかかわらず、一線を退くようにしてチャレンジするのは勇気が必要でした。でも、そこまでしてでも自分の殻を破りたかったんですよね。
和食とフランス料理では食材の考え方も調理法も根本的に違っていますし、毎日が新鮮でした。もともと、新しいことや経験のないことにチャレンジするのが好きなんですよね。だからつらいと思ったことは一度もないですし、すべてが自分の身になっています」
さらにその後、ニュージーランドの炭火焼き料理も経験し、フランス料理にとどまらない多彩な引き出しを身につけました。そんな寺田が再び料理長を務める「薪焼 銀座おのでら」とは、どのような店なのでしょうか。
▲寺田が積み上げてきた想いを表現する「薪焼 銀座おのでら」
彼が今料理長を務めるのは、全国約2,500カ所でフードサービスを展開するLEOCが運営する外食事業「薪焼 銀座おのでら」。銀座のランドマーク・歌舞伎座の向かいに位置し、わずか定員8席の店舗ですが、その規模だからこそ寺田が考える「料理」の価値を表現できていると言います。
寺田 「僕にとって『料理』は、あくまで目の前のお客様に幸せなときを過ごしていただくための、ひとつの手段です。
小さな規模だからこそお客様一人ひとりに合わせたサービスが提供できますし、お客様に喜んでいただけるようなこだわりやアイデアを、余裕を持って表現できますよね」
寺田の言葉通り、「薪焼 銀座おのでら」の随所に見られるのが「小さなこだわり」。薪焼料理のダイナミックな見せ方から提供される調味料、細やかなサプライズまで、ありとあらゆるこだわりが表現されています。
寺田 「僕自身、いい意味で『こだわりを持たない』のが強みだと思っているんですよ。今ここにはシェフが3人いますが、いつも『こうやったらおもしろいんじゃないか』というアイデアを出し合って、どんどん形にしています。
もちろんお客様にお出しするときは、細部までこだわっていますけどね。細かいところにこだわるのも、すべてはお客様とのコミュニケーションのためです。
ちょっとした話のネタをたくさん散りばめて、お客様に食事を楽しんでいただきたいんですよね。ここで話せないのがすごく残念です(笑)」
「お客様の幸せな時間」を生み出すためのコミュニケーションを何より重んじる寺田。その姿勢は、笑顔が多いシェフ同士の関係にもよく表れています。
寺田 「なれ合いになるわけではないですが、僕たちが楽しい雰囲気で仕事をすることこそ、お客様に肩ひじを張らせず楽しんでいただくためには不可欠なことだと思っています。
それも、同じチームとして目的を共有しているからこそできること。その目的を定めるのが、料理長である僕の仕事だと思っています」
若き日に学んだ「目の前のひとりのお客様のために」という信念を貫き、あらゆる形で表現しようと挑戦を重ねる寺田。これからの「銀座おのでら」について、どのように考えているのでしょうか。
▲強固な信頼関係で共に働く同僚たちと
「銀座おのでら」のこれからを見据える上で、まず寺田がチャレンジしているのは、料理人自身の働き方です。
寺田 「僕が『銀座おのでら』で働く上で大切にしているのは、お客様と社員を大切にすること。お客様だけでなく、社員も、というのが重要なんです。
なかなか『飲食業界で働きたい』という人が少ない中で、まず僕たち自身が充実して働かないといけないですよね。具体的に職場の雰囲気はもちろん、プライベートとのバランスも大切にしています。
『薪焼 銀座おのでら』は昼の営業をせず、定休日も設けています。そうすることで、僕であれば家族との時間を持てますし、家事を手伝うこともできますよね。
料理人は食を通してお客様と喜びを共有できるすばらしい仕事だと思っていますし、同じように家族とも喜びを共有できるような環境づくりを目指していきたいんです」
そして寺田の視線は、世界5地域10店舗に広がる「銀座おのでら」全体に広がります。
寺田 「『銀座おのでら』の強みは、鮨・天ぷら・鉄板焼・ワイン&レストランと、世界中に多様な業態で広がっていること。実は以前、鮨店舗で出た魚のアラを使ったフランス風のスープを提供して、大好評だったことがあるんですよ。
それぞれの業種の技術を生かした食材の有効利用はフードロスの削減にもつながりますし、そういったことも、今後はもっとやっていきたいですね。
業種間のコラボレーションだけでなく、海外に店舗があるからこそ、現地の有名レストランとのコラボレーションもできるかもしれません。そういう意味では、まだおもしろいことができる可能性はたくさんありますよ」
「目の前のひとりのお客様のために」という信念をしっかりと抱きつつ、新たなチャレンジの可能性に胸を躍らせる寺田。ONODERA GROUPとLEOC、そして「銀座おのでら」は寺田と共に、お客様の喜びと感動をいっそう生み出していけるよう、挑戦してまいります。
【薪焼 銀座おのでら ホームページ】
https://onodera-group.com/makiyaki/
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