インタビューの第6回は、ONODERA USER RUN(以下OUR)の人財教育事業にフォーカス。
人手不足が深刻な介護業界。2019年4月には特定技能制度がスタートし、海外人財のさらなる活躍が待たれています。今回はOURが進める東南アジアでの介護人財教育について、関わる人々の想いと共に紹介します。
▲渡邉 祐也(ONODERA USER RUN 海外事業本部)
OURが所属するONODERA GROUPには、全国約2,500カ所でフードサービス事業を展開するLEOC、Jリーグ・横浜FCのマネジメントを行う横浜フリエスポーツクラブ、病院とデイサービスを運営するONODERA HEALTHCARE SERVICEがあります。
とくにフードサービスを主幹事業とするONODERA GROUPですが、なぜ介護人財に関わる事業へ踏み出したのでしょうか。
OUR海外事業本部の本部長である、渡邉 祐也はこう語ります。
渡邉 「LEOCは全国でフードサービス事業を展開していますが、そのうち約1,700カ所が病院や有料老人ホームといった、介護人財を必要とするお客様です。
介護人財不足が深刻な問題となる中、食事提供の他に何かお客様のためにできることはないかと、事業展開に踏み切りました」
クライアントの悩みに加え、東南アジアで接した若者たちの想いも、事業スタートの大きな原動力となりました。
渡邉 「OURは2016年にベトナム・ハノイでスタートさせた留学事業『PW academy Vietnam』が源流となっています。
東南アジアには『日本で働きたい』という想いがあっても、経済的な問題があったり、十分な教育が受けられなかったりして断念してしまう若者たちが数多くいるんですね。
そうした人々に無償で日本語と介護の教育を行うことで、彼らが活躍できる場を生み出せますし、社会貢献にもつながります」
そもそも社名のONODERA USER RUNとは、「ここで学ぶすべての人々(USER)が、社会で活躍できる場(RUN)を切り開く」という意味。その名前が示すように、OURの各学校における授業はすべて無償で提供されています。向学心と「日本で働きたい」という志さえあれば、夢をかなえられるチャンスが大きく広がっているのです。
介護現場の想いと、東南アジアの若者たちの想いをつなげるために生まれたOUR。具体的には、どのようなスキームで事業を展開しているのでしょうか。
▲フィリピン・セブでの授業風景。日本語と介護知識の教育が行われる
OURが取り組むのは、東南アジアでの教育事業と、国内の病院・介護施設への人財紹介事業。
日本語と介護技術の教育から、日本での就業先紹介、就業後の生活サポートまで一貫して行っています。日本での就業に不可欠である特定技能ビザ取得や、送り出しに関わる手続きの支援も、現地政府が認定した送り出し機関と連携して行っているのです。
そのうち、教育事業はベトナム・フィリピン・ミャンマー・カンボジアの4カ国・23校で展開。約3,000名の学生が在籍しており、スタッフも約300名を数えます(いずれも2020年3月現在)。現地スタッフにはEPA経験者(経済連携協定に基づく日本での介護施設就労経験者)をはじめ、日本語や現地の事情に詳しいメンバーを配置し、日本で活躍できる人財の育成をサポートしています。
そんなOURが教育事業の強みとしているのは、「学生一人ひとりと向き合う」教育です。
渡邉 「ONODERA GROUPはフードサービスをはじめ、あらゆる事業においてお客様や社員といった“人”に向き合うことを最も大切にしてきました。その想いは、OURでも決して変わりません。
私たちは学生たちの実家まで足を運び、学生や保護者と面談をしながら教育を行っています。地域によっては学生寮を整備し、生活のサポートまで行っています。また学生の評価においては、学業成績はもちろんですが、授業態度や授業の出欠といった部分も大切にしています。
普段から学生一人ひとりの個性や強みを把握し、安心して学び続けられる環境を整備すると共に、お客様に自信を持ってご紹介できる介護人財を育成しています」
OURは教育から紹介・サポートまで社内で一貫して行っているため、クライアントにとっても「学生の顔が見える」安心感を提供できることが特徴。就業前にはクライアントと学生による面談を行うことで、不慣れな海外の就業でもミスマッチを最小限に抑えられるよう努めています。
東南アジアで進む、OURの人財教育。実際にはどのような学生が学んでいるのでしょうか。
▲PW Myanmar ヤンゴンセンター カマーユ校
2020年2月、現地で初めて介護分野の特定技能試験が行われたミャンマー。人口の中心が20代の若者である一方、一人当たりのGDPが日本の1/30程度であることから、海外での就労が大きな魅力となっています。OURが運営する「PW Myanmar」のヤンゴンセンターでも、現在500名以上が学んでいます。
その中のひとりである、カイン・ティンザーミィ(20歳)。3人兄弟の末っ子として生まれましたが、幼いころから「家族を支えること」への意識を持って育ってきました。
カイン 「母が肝臓の病気を患っていたこともあり、小さいころから家事の手伝いをしていました。その中で『私が家族を支えていかなければ』という想いや、介護のような他者をサポートする仕事への関心が生まれました」
その中で、日本語と介護を学べるPW Myanmarに入学。
2020年3月現在は家族と離れ、学校にほど近い学生寮で生活を送りながら勉学に励んでいます。入校から約9カ月でJLPT(日本語能力試験)のN4に合格。その後も勉強を続け、約5カ月でN3を取得し、基本的な日常会話はそつなくこなすレベルにまで成長しました。
クラスでは人見知りをしない明るさや気配りのできる性格で、同級生や教員から厚い信頼を集めるカイン。彼女の目標はどのようなものなのでしょうか。
カイン 「私の目標は介護福祉士の資格を取って、まず日本で10年働くことです。その後は自身の経験を生かしてPW Myanmarの先生になり、より多くの優秀な学生を育成できればと思っています」
まじめで、他者を気づかうことのできる学生が数多く在籍しているPW Myanmar。2月の特定技能試験では350名以上が合格し、近い将来日本で働くことを心待ちにしています。
▲LEOCの特定技能ビザによる就業者は、2019年度に12名まで拡大
特定技能制度の施行から約1年。導入の遅ればかりがクローズアップされていますが、渡邉は「技能実習制度が現行のままである限り、特定技能のニーズは高まっていく」と推測します。
渡邉 「そもそも技能実習は、日本の技術を習得し、それを母国に帰って生かしていくための『研修制度』なんですね。それがなぜか、日本の人手不足を補い、実質的に労働力の一端を担う制度へ変容してしまっています。
特定技能の方が、働く海外人材にとってメリットの大きい制度です。たとえば給与が『地域別・産業別最低賃金以上』と定められている技能実習に比べ、特定技能は『日本人と同等以上』と定められているんですね。より長く、安定して働き続けられる。
日本人も海外人財も一緒になって働いていく時代が到来した中で、特定技能は今後伸びてくるビザになると思います」
LEOCではOURに先んじて、すでに特定技能人財が12名就業。日本全体でも特定技能(外食)による就業者が約100人にとどまっている一方、LEOCが大きく先駆けています(参考はこちら)。
2020年3月現在、OURでは613名の学生が特定技能試験に合格。送り出し機関と連携して慎重に準備を進め、今年6月~7月ごろの渡日・就業を見込んでいます。
ONODERA GROUP全体で進む、特定技能人財の活躍。OURは人手不足に悩む介護現場の想いと、日本で活躍したい若者たちの想いに真剣に向き合いながら、さらに事業を大きく展開していきます。
次回はOURにおける人財紹介事業にフォーカス。OURで拡大する病院・介護施設等の人財受け入れ先や、就業後のサポートについて、担当者の想いと共にご紹介します。
【ONODERA USER RUNホームページ】
https://onodera-user-run.co.jp/
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